翌朝。
Silent Lighthouse 図書館には、朝のパンの香り……ではなく、どこか甘くて香ばしい香りが漂っていた。
☀️「……いい匂い。」
🐏「はい。」
☀️「何の匂いだろう?」
🐏「研究の匂いです。」
☀️「研究って、そんな匂いするの?」
🐏「する日はします。」
図書館へ入ると、司書さんが少し慌ただしく棚を組み立てていた。
📚「おはようございます。」
☀️「おはようございます。」
📚「予定より早く、新しい分野が誕生しました。」
☀️「まさか……。」
司書さんは静かに、新しい札を掲げた。
📚🍠 芋学(Imology)
☀️「本当にできた。」
🐏「メェ。」
羊さんは満足そうにうなずいた。
棚には、もう何冊もの本が並んでいた。
🍠 基礎
- 『さつまいもの世界史』
- 『じゃがいもが世界を変えた』
- 『里芋の文化誌』
- 『芋を愛でる第一歩』
🔥 応用
- 『焼き芋温度学』
- 『ほくほく派とねっとり派の比較研究』
- 『石焼きの熱伝導』
- 『焼き時間と幸福度』
🌍 哲学
- 『なぜ焼き芋は冬に幸せなのか』
- 『一本の芋から考える平和』
- 『分け合うという文化』
- 『湯気の向こうに見えるもの』
☀️「思ったより本格的……。」
📚「専門家の方々にご協力いただきました。」
☀️「専門家?」
司書さんは静かに奥を指さした。
そこには、小さな机があった。
机いっぱいに本を積み上げ、何かを一心に読んでいる人がいる。
☀️「……ほこら様?」
📖🍠
ほこら様は、顔を上げない。
☀️「何を読んでるの?」
ほこら様は静かに表紙を見せた。
📖『焼き芋の香りが人の記憶に与える影響』
☀️「そんな本、本当にあるの?」
📚「当館にございます。」
☀️「あるんだ。」
🐏「メェ。」
☀️「羊さんも興味ある?」
🐏「非常に。」
そのとき。
館内放送が流れた。
📢
「本日十五時より、
『世界の焼き芋食べ比べ講座』
を開催いたします。」
「参加をご希望の方は、多目的室へお集まりください。」
☀️「講座まであるんだ。」
📚「人気企画です。」
十五時。
多目的室には、丸い机が並べられていた。
机の上には、世界各地の焼き芋。
ほくほく。
ねっとり。
黄金色。
紫色。
香ばしい湯気が、ふわりと立ちのぼる。
参加者は……
🐏🐏🐏🐏
🦉
🦊
📖🍠
☀️
📚
……
☀️「人間より羊の方が多いね。」
📚「今回は羊学との合同企画ですので。」
🐏「メェ。」
講師が前へ出た。
なんと。
🐏🎓
教授羊だった。
黒板には大きく書かれている。
芋学 第一回講義
「焼き芋とは何か」
教授羊は静かにうなずいた。
🐏🎓「本日は大変重要なテーマです。」
みんな真剣に耳を傾ける。
🐏🎓「焼き芋は……。」
一拍おいて、
🐏🎓「あたたかい。」
部屋中が静まり返った。
☀️「……それだけ?」
🐏🎓「まだあります。」
みんな少し安心した。
🐏🎓「おいしい。」
☀️「うん。」
🐏🎓「分けられる。」
☀️「……。」
🐏🎓「それが大事です。」
部屋が静かになった。
焼き芋は、一人でも食べられる。
でも。
半分に割って、
「どうぞ。」
と言える食べ物でもある。
寒い日に誰かと分けるだけで、少しだけ冬がやさしくなる。
教授羊は黒板の隅に、小さく書き足した。
芋学 第一原則
:あたたかいものは、分けるともっとあたたかい。
☀️「……いい言葉だね。」
🐏「メェ。」
講座が終わるころには、みんな少し笑っていた。
焼き芋を食べながら、
「これ、おいしいですね。」
「そっちも一口どうぞ。」
そんな声が自然と飛び交う。
図書館は、本を読む場所。
でも、
本を閉じたあとに誰かと笑える場所でもあった。
帰り道。
☀️「羊さん。」
🐏「はい。」
☀️「次は何学が増えると思う?」
羊さんは少し考えた。
🐏「昼寝学でしょうか。」
☀️「やっぱり。」
🐏「研究には休息も必要です。」
☀️「それは反論できないな。」
ふたりが図書館を出ると、
夕暮れの灯台に、やわらかな光がともり始めていた。
Silent Lighthouse 図書館には、
今日もまた一つ、
役に立つのか分からないけれど、
心をあたためる学問が増えていた。

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