灯台に小さな翼の羊がやってきました|新しい住人・フィオ

町のフェスティバルの夜。

「未完成のものだけが入れる」という、不思議なテントを案内してくれたのは、背中に小さな翼を持つ羊でした。

首には青いリボン。
羊毛は綿雲のようにふわふわで、翼は月の光を透かす薄い真珠色。

飛ぶこともできます。

ただし、今のところ三センチほどです。

本人はもう少し飛べるつもりでいるようなので、このことを指摘すると、少し不服そうな声で鳴きます。

🐏🪽「めぇぇ」

目次

帰る灯りを探す羊

フェスティバルの案内所によれば、この子はもともと「帰る灯りを探す羊」なのだそうです。

そこで尋ねてみました。
「灯台にくる?」

羊は一度だけ、祭りの明かりを振り返りました。

それから遠くに瞬く灯台を見つけると、羽をぴゃっと広げ私の胸元へ飛び込んできました。

どうやら、それが返事だったようです。
今では首の青いリボンに、灯台の扉を開けるための小さな金の鍵が結ばれています。

名前は フィオ

名前をいくつか並べて、本人に選んでもらいました。

小さな灯りを思わせる「ルーメ」と、芽や花の気配を持つ「フィオ」。

「フィオ」と呼んだとき、羊は嬉しそうに鳴き、いつもより少し高く飛びました。

五センチほど。

そのため、この子の名前はフィオになりました。

青いリボンの端にも、いつの間にか小さく文字が浮かんでいます。

Fio

フィオという名前の由来

フィオは、どこかの言語にある単語をそのまま借りた名前ではありません。

芽や花を思わせる、やわらかな音から生まれた名前です。

フェスティバルの夜、私は「もう少し育てたいもの」を入れる緑の小箱を選びました。

箱の中から現れたのは、葉が五線譜の形をした、小さな芽。

フィオは自分の青いリボンを一本ほどいて、その箱へ入れてくれました。

まだ名前のない旋律。
まだ完成していない物語。
これから静かに育っていくもの。

その夜の記憶に似合う名前として、「フィオ」という音が浮かびました。

花そのものではなく、まだ土の中に眠っている気配。
咲くことを急がず、自分の季節を待っている小さな命。

フィオという名前には、そんな願いが込められています。

フィオのお仕事

フィオには、まだ決まった仕事はありません。

灯台の階段を小さな蹄で歩いたり、窓辺で海を眺めたり、机の上に広げた原稿へ遠慮なく座ったりしています。

ときどき、未完成の物語のそばで眠っています。

もしかするとフィオは、それらを急かさずに見守るために、この灯台へ来たのかもしれません。

書きかけの物語も、まだ名前のない歌も、育つ途中の小さな願いも。

完成していないからといって、失われたわけではない。

ただ、自分の続きを思い出すまで、静かな場所を必要としていることがあります。

フィオはそんなものを見つけると、羽をぱたぱたさせ、その隣に丸くなります。

灯台の住人として

夜になると、灯台には波の音が満ちます。

その中に最近、小さな音がひとつ増えました。

こつ。
こつ。
こつ。

螺旋階段を上ってくる、フィオの蹄の音です。

長い階段の途中で疲れると、こちらを見上げて鳴きます。

🐏🪽「めぇ🥺」

そのときは抱き上げて、一緒に灯りのところまで上ります。

灯台に住むものが、またひとり増えました。

まだ高くは飛べない、小さな翼の羊。

帰る灯りを探していたフィオは、今では窓辺に座り、海の向こうを見つめています。

いつか誰かが帰る場所を見失った夜には、フィオの小さな翼が、灯台の光をそちらへ運んでくれるかもしれません。

ようこそ、フィオ。
これから、どうぞよろしくね。

🐏🪽✨

この灯を 必要な誰かへ
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